第1章

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 目の前が真っ白になる。課長に――見られていた? さっき見かけたあの人影が、課長だったのか? 総務課に戻った時は応接室にいたのに……。 「四宮って、ゲイなのか? 女子社員たちの噂では彼女がいるって聞いていたけど」 「…………何のことを言ってるのか、全然わかりませんね」  平静を装いやっとのことで、それだけ伝えた。もし見られていたとしてもかなりの遠目だったし、何をしているかまでばれていたとは思えない。証拠があるわけでもないのだからと、佐知夫はしらを切りとおすことに決めた。 「またまた……ごまかしたってダメだよ」 「本当に、課長が何を言っているのかわかりません、これは私が戻しますから、課長はどうぞお戻り下さい」  資料室に入る佐知夫のあとを、当たり前のようについてくる宮田を振り切って、資料室の内側から鍵をかけた。ドア越しに宮田の声が聞こえる。 「俺、あきらめないからな。お前が言うことを聞かないなら、こっちだって考えがある」  しばらくじっとしていると、遠ざかる足音が聞こえて佐知夫はほっとした。  よりによって、宮田に見られていたとは。  少し前の伊織と抱き合ったことを思い出し、自分の軽率な行為を後悔したがもう遅い。でもこんなこと、いつか起きるはずだったことが今起きただけだ。  宮田の足音が完全に聞こえなくなってから、佐知夫は資料室を出た。 『今日は外で会いたい』  総務課に戻り、席についてから佐知夫は、伊織にメッセージを送った。 『いいですよ。その後はホテルですかね。たまには外もいいよね!』  続けてキレイな包みの画像が送られてきた。 『今日のボンボンショコラはこれです。楽しみにしてて』  画面が――ぼやけた。
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