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※日販の書店向け冊子に書いた原稿を改稿したものです
2014年の消費税増税以降、文芸書や文庫本の売上は前年同月比1割から2割減が続いている。
そんななか比較的元気で市場規模が大きいジャンルが、キャラクターのイラストを表紙にした小説「ライトノベル」(ラノベ)である。
本稿では書店での売上増進に役立つような、ラノベ市場の動向を紹介する。
・文庫本市場の2割を占め、ラノベ単行本は伸び調子
『出版月報』(出版科学研究所)2015年3月号によれば文庫本市場におけるラノベの年間売上金額は2014年に225億円、文庫本全体におけるシェア率は18.5%。文庫売上の約5冊に1冊はラノベである。
ピーク時の2012年は284億円だったから2年連続の減少は憂慮すべき事態ではある。
ただし、矢野経済研究所調べによると、2014年のラノベの電子書籍での売上は40億円と推計されており、紙の文庫225億+電子40億にくわえて、すぐあとに述べるように書籍単行本が急伸していることを見れば、全体でこのジャンルがシュリンクとは言えないだろう。
そう、最近では文庫ではなくソフトカバー単行本で刊行されるラノベの成長が著しいのである。代表的な版元アルファポリスは2012年3月決算では売上約10億円だったが2015年3月決算では約26.6億円と躍進。
このジャンルは、近年、動きが鈍いノベルス棚やハードカバーの純文学などと入れ替わり、棚面積を増やしている。
特筆すべきは、ネット上の小説投稿プラットフォーム「小説家になろう」で人気の作品を書籍化する動きである。
紙の本になったネット小説は、イラストを表紙にした単行本で刊行されることが多く、KADOKAWAやアルファポリスを筆頭に各社がこぞって参入している。
『ログ・ホライズン』や『魔法科高校の劣等生』などアニメ化作品も出始めており、当面は売上規模も拡大を続けると思われる。
2014年には、CCC傘下の書店ではネット発のコンテンツの小説書籍化作品の売上は、小説全体の半分を占めるに至っている(自己啓発書など広い意味での一般文芸のなかでは25%前後)。
日本ではジャンル別の統計がラノベや時代小説、児童書をのぞけばほとんどないから確たることは言えないが、今やラノベはミステリと並んで日本の小説市場の中核を担っていると言っても過言ではない。
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