fragment

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「一瀬課長、今日お昼一緒にいいですか?」 彼の声が俺の耳をそっと刺激したのは、とある快晴の日の午後だった。俺はいつもデスクで自分で作った弁当を食べるのだが、彼ももちろんその事実を知っているものだと思っていた。 「いや、私は弁当なので、みんなと食べてくるといい。」 「俺も今日、弁当なんですよ。いつも課長弁当食べてますし、いつかご一緒したいと思ってたんです。今日やっとできる!いいですか?佐々木は食堂行ってますし、ここ座りますね。」 あ、ちなみにみんなの前では自分の事を私と言うようにしている。威厳なるものを、こんな私でも部下にアピールしたいのである。しかし、この情報はあまりいらないかな。ではこの展開の続きをお話しするとしよう。 「佐々木はいつも帰ってくるのもギリギリだから、片山君はゆっくり食べるといい。」 「課長って佐々木の事結構買ってますよね。同期の中でも結構良い位置キープしてるっていうか。俺と違って要領も良いですし…」 君は飛び抜けて要領が良いと思うのだが、これは好意を感じているからこその感情なのであろうと、今日見事大成功した豆腐ハンバーグを静かに噛み締めながら俺は彼をじっと見続けた。 「課長って結構、人の事じっと見ますよね。」 「え?あ…そうか、癖なんだ。悪かった。」 しまった、好意を目線に加えるのはやはり危険だった。 「いやいや、全然大丈夫です。むしろ嬉しいし。ちゃんとこんな俺の事でも見てくれてるんだなって思いますし。課長あんまり俺達部下と話してるイメージないから。でも、みんな結構課長の事好きっていうか、あんまり怒らないじゃないですか?あ、いや、良い意味でですよ!理不尽に怒らないっていうか、どちらかというとちゃんと指導されてる感じ。それが良いんです。だからみんな課長の誕生…あ。い、今のはちょっと、まじですみません。今のちょっと聴かなかった事に…あ、まじで何やってんだ俺…はあ…」
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