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色々言いたい事はある。でも、とりあえずこれだけはどうしても言いたかった。
“可愛い。”
しかし、その言葉はしっかりと喉の奥底に沈みこませた。豆腐ハンバーグの圧力では到底鎮められないほどの欲求が込み上げてきたが、ここでその言葉を発してしまうと、色々な物を失うような気がしたのだ。
「片山君も頑張っていると、私は思う。」
これで精いっぱいだった。もう何を頑張っているとか、できればそこには触れないでほしいとは思いながらも、なんとか言葉を口にできた。今日は少し強めのお酒を飲んで眠るとしよう。今しっかりと決意をした。
「俺何処直せばいいと思います?佐々木にあって、俺にない物って何だと思います?あ、てかすみません!食事中にこんな俺ばっかり…すみません、食べます。」
“そのお弁当は自分で作ったのか?”
“自分で作っていると言うのなら、そのお弁当箱は少し可愛すぎやしないか?”
“それは彼女にプレゼントをされた物なのか?”
“というか、彼女はいるのか?もしや、同棲しているのか?”
“君は佐々木の事を随分と気にしているが、もしかして君は佐々木に対して何か特別な感情を持っているのか?”
“もしそうなら、男性もいけるという事でいいのか?”
“もしそうなら、年上は守備範囲に入るのか?職場恋愛は可能か?その相手が上司でも問題ないのか?”
今思った全ての思考を必死に停止させた。今日は随分とあっさりとしたおかずにしてしまったものだ。油ものでもがっつり食べておけば、こんな思考一気に吹き飛ばせたかもしれないのに。俺はほうれん草と卵の和えた付け合わせを少しつつきながら、物思いに耽ろうとしていた。
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