もっと近くに感じたいから

13/39
前へ
/391ページ
次へ
そして和泉さんがゴホンッと軽く咳払いをしたあと、あたしにちらりと視線を寄越す。 「で? 何で急に名前で呼んだって?」 「え……? あ、えっと……悠亜さんに、『あとになればなるほど言えなくなる』って言われて。 ──それに、あたしも名前で呼びたくなっちゃったから」 紗羽さんが『晴希』って呼ぶのを聞いて、ちょっと面白くなかったというか。 今までそんな風に感じたことはなかったのに。 けれど、それをやめてもらうわけにはいかないし。 だったら、あたしもそう呼べばいいんだって。 そしたらもっと近くに感じられるかなって思った。 「それだけ?」 「え」 「ただ呼びたくなっただけ?」 あたしの胸の内を見透かすようにそう言った和泉さん。 けれど紗羽さんに嫉妬した……なんて言えるわけないよ。
/391ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8618人が本棚に入れています
本棚に追加