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「ああ、玲夢のことよろしくな」
そう言ってあたしに視線を向けた和泉さんの瞳はやさしく細められていて、心臓がどきんっと大きく跳ねる。
それと同時にじわりじわりと頬も熱くなって、両手で頬を挟むように覆った。
「もう本当に幸せそうなんだから」
あたしを見て、悠亜さんはそう言いながらやさしく微笑む。
その隣で、紗羽さんがぽつりと呟くように口を開いた。
「晴希、よかったね」
「何で紗羽が泣いてんだよ」
「だって……」
「まあ、紗羽らしいけどな」
目尻からほろりとこぼれた涙を人差し指で拭っている紗羽さんに、笑いながらそう言う和泉さんを見て、ちくりと胸が痛む。
和泉さんの心の中にはもう紗羽さんはいないってわかっているけれど、こういう姿を見ると、ちょっぴり嫉妬してしまう。
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