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ゴロッと寝返りを打って仰向けに体制を変えると、ギョッと見開かれた彼女の大きな瞳。
「い、イキナリそんな所に立ってないでよ!」
「……。」
慌てたように取り乱して狼狽えるその姿。
相変わらず…面白いな…
” 俺の事、好きになってよ ”
あの告白をしてから、彼女の気持ちは…少しでも俺の方に揺れてくれているだろうか…
少しでも、惑わされてくれているだろうか。
「…な、なによ?」
彼女の瞳が揺れながら俺を見つめた。
声も微かに震えていて、思わず小さく笑ってしまう。
--緊張し過ぎ。
「ーー別に。
あ、コーヒーでも飲む?それともココア?」
「あ、…飲む。
ココアで…マシュマロも…」
「りょーかい」
まあ、いいや。
今は深く考えるのはやめよう。
何げない素振りで、いつも通りの俺でいよう。
表面上で接していれば、
「はい。」
「あ、ありがと!」
ーー思った通り。
警戒心ゼロ、で俺に向き合ってくれるんだ。
その方が彼女に付け入りやすいし、都合も良い。
今はもう、甘い匂い漂うココアの事しか見えていないんだろう。
彼女は、ふにゃっと顔を綻ばせている。
そんな姿を見つめてクッと笑みを零しながら、嬉しそうにココアを口にしている彼女の隣に腰を下ろした。
まあ、こういう単純な所は嫌いじゃないんだけど。
どうして彼女ってこんなに隙だらけの性格なのかな…って思う。
「……なに?」
「ーーナンデモ。」
能天気、無防備、単純。
意地悪めいた口ぶりや態度をやめて何もしなければ、俺の事を弟とでも本気で思ってしまうかもしれないな、とも思う。。
彼女が俺の事を”男”なんだと意識してくれる時は、俺が悪戯に距離を縮めて接近した時だけだろうから。
距離とかの問題じゃなくて、いつも”男”なんだと意識して欲しいけどね。。
って、、Everyday男だよ!!俺は。
…なんかこのままじゃ悔しいような面白くないような……
そう思ったら、胸の内に潜んでいた本能が待ってましたとばかりに顔を出した。
「春樹…、なんか近くない?」
「そ?俺、脚が長いからかなあ?」
眠そうに潤ませた瞳を左右に揺らして落ち着かない顔を浮かべる彼女。
何度もチラチラと俺を怪訝な顔で見返しては、そわそわと落ち着きなさそうにしている。
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