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「なあ~に、期待してたんだか?」
「し、してないわよ!!」
真っ赤な顔して肩を震わせる彼女が、面白くて仕方ない。
キスされるとでも思ったのか、「へ?」って間抜けな顔して、恥ずかしそうに伏し目がちになってるし。
ククッと噛み締めるように笑い続ける俺に、彼女は耳まで赤く染めて顔を背けた。
「本気にした?ごめんね、期待させて」
「してないってば!!」
「あ、たかちゃん、鼻血出てる!」
「ーーあ、えっ!?やっ、う、嘘っ!?」
「ハハッ、嘘だよ?」
「なっ、ちょっ、春樹~!!」
……どうしてこんなに反応が面白いんだろう。
”もう!!”と鼻息を荒げて右手を振り上げる彼女の手をそのまま掴んで顔を近づけたら、彼女の大きな瞳が俺を映して不安げに揺れていた。
……ああ…もっと困った顔を見ていたいな…
って、、
「…………。」
困った顔を見ていたい……って、馬鹿か俺。。
何気なく湧き出た思いに苦笑した。
ずっと傍に居る事なんて有り得ないのに。何言ってんだ。
ーーーでも。
俺がこんな事を思うのは可笑しいかもしれないけど。
貴女はいつまでも変わらないで、そのままの貴女でいて欲しいって思ってしまう。
これから先。
貴女はどんな奴と、どんな誕生日を迎えていくんだろう。
貴女の傍に居てくれる奴が、嘘のないまっすぐで優しい奴であればいいと
心の何処かで思いながら、彼女に笑顔を向けた。
深夜0時を告げる音が響き渡ったこの場所で。
30歳の誕生日に。
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