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翌日、クリスマスイブ。
世間は浮足立つような人々で溢れていて、街はカラフルな装飾と電飾で輝いていた。
なのに……
「じゃーたかちゃん、9時半頃には会社出てね?
10時からお店は予約してあるからさ。絶対だよ?」
「あのね…春樹。休み明けだし、
もし案件でトラブルがあれば対処しなくちゃいけないし、
絶対……なんて、約束出来ないから」
「ハ?」
「いや、当たり前でしょ?仕事なんだから。
アンタみたいに遊んでるわけじゃないんだからね?」
……全然、クリスマス気分じゃない彼女。
自分の誕生日でもあるのに浮かれたオーラ、全く皆無。
俺一人で張り切ってお店まで予約してたのに、馬鹿みたいだ…
はぁー、と彼女は明らかに気乗りしない表情を浮かべて溜め息をつきながら出勤の支度をしている。
「…………。」
俺とクリスマスを一緒に過ごすのがそんなに嫌なんだなって彼女とのテンションの違いに若干戸惑いを隠せなかった。
挙句には、
「……自惚れんのも大概にしなさいよ!?
私はアンタなんか嫌いどころか、大っ嫌いなんだからね!!!」
「…………。」
…………トドメの一撃まで食らわされた。
「…なっ、何よ?」
「…………。」
身体が一気に冷え込んだように、目の前にすっと影を落とされた気分だ。
その言葉に固まってしまった自分に、失笑。
息苦しさと切なさが込み上げてくる。
……嫌いどころか、大っ嫌い…って、、
すっげぇ破壊力。
俺ってどんだけ嫌われてんだよ…。
慌ただしくバタバタと俺から逃げるように部屋を出てった彼女の姿を横目で流して、ハハッて乾いた笑いが零れ出た。
どんだけ俺は彼女の視界に映っていないんだよ。
どんだけ……どうでもいい存在なんだよ。
「…………。」
まだ時間はあるのに、俺は一人で焦っていた。
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