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「……」
無心になって寝ようとしても…寝つきが悪くて上手く眠れない。
カシュ!
もう一度冷蔵庫から取り出した缶ビールを勢いよく開けて口に運んだ。
「……。」
『──出て行って、…春樹』
────そう言った、あの時。
春樹を追い出そうだなんて、…思っていなかった。
あれは、私の精一杯の強がりで、…本心から言ったわけじゃなかったから。
あんな風に…突き放すつもりじゃなかった…
私の言う事をすんなり聞いて、本当に出て行くだなんて…思わなかったんだ──
”ごめん”、そう申し訳なさそうに謝って…、
今までの事を全て、私に話してくれるんじゃないかとさえ…思っていて…
「うん。…そうだね」
そんな、…たった一言で、終わりになるだなんて…
そんな、…後腐れもなく出て行ってしまうだなんて…思ってなかった。
もっと…やり込められるかと思ってたのに。
もっと…粘られるかと思ってたのに。
アッサリと、「はい、そーですか」とでもいう様に出て行った春樹の私への未練のなさに…、もはや…笑うしかなかった。
あのまま…
春樹との同居を続けていれば良かったのかもしれないけれど。
何も聞かなかった事にして…気付いていないふりをして、
…いつものように隣にいれば良かったのかもしれないけれど。
でも、…
自分はそんな風に上手く振る舞う事が…出来なかった。
曲がった事が嫌いな自分を…誤魔化す事が出来なかった…
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