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ふう─…、と。
深い息をついて頭をソファーに仰向けで凭らせ、リビングの白い天井を仰ぐ。
何かの答えがそこに書かれているわけもなく、答えを求めているわけでもない。
「はああ~、……」
もう一度、自分の中で渦巻くもの全てを吐きださんばかりの重苦しい息を吐いて瞼を…そっと閉じた。
───先週末。
「…馬鹿よねえ。ってゆーか、顔死んでるし。
ぶっさいく過ぎて見てらんないわよ。
それにしてもキスは軽い挨拶、セックスは遊びな感覚の
あんな若造に嵌るなんて。
だから…止めとけって、釘さしたのに。…そもそもねえ、……」
武子にカフェで散々罵られて--
グサグサと、言い放たれる矢に少しは対抗しようと、
口を開きかけた…その瞬間
ブブ…ブ。
--突然震えた、携帯。
「……」
着信画面に表示された名前を見て、
思わず固まってしまった。
中国へ出張中の、関口先輩からの着信。
「…俺、実は…
…高嶺に謝らないといけないんだ。」
そう電話越しに切り出した先輩からの、思いもしない…衝撃の事実。
もう動けないと蹲っていた矢先に、たまたま飛んできた蜂に刺されて、
挙句たまたまシュルリと現れた蛇に噛みつかれたような…
そんな立ち上がれない位の、打撃だった。
春樹は、
──関口先輩の弟ではなかった。
関口先輩は、春樹に口裏を合わせるよう脅されていたらしい。
「俺の婚約者、…鬼瓦部長の娘さんって高嶺も知ってるよな?
実は、その娘さんを紹介される前に社内で俺、付き合ってた奴いてさ…」
そう…先輩の口から出てきた、鬼瓦部長は
関口先輩と共に現在も中国へ出張中の直属の上司だ。
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