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経緯を思えば、関口先輩の取った選択は無理のない事なのかもしれない。
他に選択肢が思いつかなかったのだろう。
自分の現状を維持できる解決策が…。
「………」
ああ、…と思う。
言いたい事も、聞きたい事も…まだ足りない。
けれど。
今は…そこが問題じゃない。
頭のベクトルが電話越しの先輩よりも、春樹に傾いていく…
春樹は、そうまでして…私と本条先輩の関係を壊したかったのだろうか──、
私の部屋に半ば強引に転がり込む為に、関口先輩に…付け入ってまで…
溢れ出る疑問は一つも消えることなく…積もって行く。
携帯を握りしめたまま、カフェテーブルに項垂れると、
武子が私の震える肩を抱きしめてくれた。
「……」
全部──、
…嘘だった。
春樹に本気なんてものなかったのだろう…とさえ思えてしまう。
あの温かい手も…
優しく頭を撫でてくれた温もりも…
重ねたキスも…
全部、
全部全部っ…
全部──、…
「……」
気付けば何も知らない春樹の…素性。
関口先輩の弟だと思っていたのに、
それさえも繋がらずに…唯一の信じていた糸が切れてしまった。
…なのに。
もう、全部が…彼の嘘だと分かっても、なお──、
それでも──…、と。
もしかしたら、…だなんて、何処かで期待している自分…
来週の春樹の誕生日。
彼が来る事なんて無いのだろうと分かっていても、…私は…
……。
「……バカ…だよね…」
───変えようのない現実を受け入れようとすればするほど、
浮き彫りになる…感情。
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