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「なに?」
「もう少し、ここにいよ?」
手を握り、後ろから肩に顎を乗せられた。
彼女の香りが濃くなり、うっすらと手に汗がにじんだ。
「紗世、また彼氏と喧嘩したでしょ。」
「・・律にはすぐばれちゃうね。」
紗世はモテる。
反抗期真っ最中なのか、家に帰るのも嫌がり彼氏の家に泊まるのは日常で。
別れたり、喧嘩した時には触れ合いが多くなる。
好きだからこそ、分かる彼女の行動。
「ねぇ律、一人暮らし早くしなよ。」
「そうなったら、うちにある荷物もって帰ってよ。」
紗世は必要な荷物をうちに置いてある。そこから必要なものをその都度持っていき、置いて帰るのだ。
「やだ。持ってく。」
この好意の見え隠れは、友達としてか、私の気持ちを知った上でか。
紗世のこうした台詞は今に始まった事ではない。
「高校まで、だよ。」
「律?」
「高校卒業するまでは、紗世と友達でいれる。」
ぎゅっと手に力が入ったのがわかった。
「親と約束してるから、卒業までは大人しくしとくって。」
「なにを?」
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