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身長が同じな分、振り返られると顔が急接近する。
後数センチで重なりそうな唇。
「後から行くから。」
ぷにぷにと唇を指で押され、律は微笑んだ。
ここは、キスでしょ?!
なに?この甘い雰囲気!
ドキドキする胸が伝わらないよう、慌てて浴室へ向かった。
触れた唇が熱い。
「私、こんなうぶだっけ?」
困惑する頭にシャワーをあけた。
キスもセックスも経験はある。同世代よりも。なのに、こんなにドキドキするのは律だけで。
高校時代、彼女の家で眠いからと初めて膝枕してもらった時には、あまりの居心地の良さに自分だけのものにしたくなった。
勉強している横顔を見つめながら、彼女の匂いがする布団に入り込み、体が疼くのを覚えた。
抱き付けば引き剥がさない彼女に甘え、自分のものだと周りにアピールして牽制した。
思い返せば思い返すほど、律の事ばかり考えていた高校時代に恥ずかしくなった。
「これって、かなり好きだったわけ、よね?」
がらがら
水音で気配に気付かなかった。
裸の律に声にならない悲鳴のような驚きを覚えながら、湯船に慌ててつかった。
「紗世、まだ泡ついてるよ。」
首元から肩にかけてお湯を手でかけられ、思わず律の顔をじっと見つめてしまった。
今、自分の顔はよほど物欲しげなものになってるに違いない。
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