ごっこ

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彼女の勤め先は店舗は多くないが、そこそこ有名な家具屋だった。 スーツをまとったスタッフが驚いた顔でこちらを見ていた。 何やらこそこそと話しているのも分かる。 2人掛けのソファを指させば、少し緊張気味だった渚も笑顔になった。 「革が貼り替えれるから、好きな色を選べるよ。」 「そうなの?白いのがいいな。」 「良かったら、こちらがお色のサンプルですのでどうぞ。」 そこへ背が低めで幅の広い男性スタッフが近づき、サンプル本を開いてきた。 「ありがとう。渚さん、どんなのが好き?」 ここぞとばかりに腕にしがみつき、顔も近くして話して楽しげに相談すれば、違う女性スタッフが駆け寄ってきた。 「渚ちゃん!久しぶり-!」 親しいのか、手を握ってニコニコと話し出す彼女。 引き剥がす作戦なのか、男の方がここぞとばかりに違うソファを案内してきた。 あえてそこを無視し、握っていたスタッフの手を払いのけた。 「気安く渚さんに触らないで。」 ほんと、苛々する。 「いこ、渚さん。」 軽くスタッフを睨み、ニコッと渚に微笑み奥へ進んだ。 後ろで何あれ、と陰口が聞こえ、笑いをこらえた。 「やっぱり一緒に暮らすなら、ベッドは少し広い方がいいねー。」 聞こえるようにキャッキャッと同棲を匂わせば、さらにざわつくのが分かった。 腕を組み、さらに手を恋人つなぎしてアピールすれば誰も近寄っては来なかった。
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