ごっこ

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すると、渚の手が軽く握り返された。 そしてニコッと優しく微笑む彼女。 小さな声で「ありがとう」と、呟かれた。 ドキ・・ 胸が高鳴るのがわかった。 ほんと、今日の私はうまく成りきってる。 そうしてブラブラと15分ほどいちゃいちゃを見せ付け、お店をでた。 「伊織さん、ありがとうございました。」 「まだですよ。近くの公園までこのまま行きましょう。」 「あ、は、はい。」 このまますぐ離れても良かったが、やはり念の為に少し離れてからが安全。 いや、それは建前でまだこのままでいたかった。 腕を繋いだまま、いたかった。 「気分はどうですか?」 「スッキリしました。これでやっと、ここを離れれます。」 離れる その台詞に何故か傷付く自分がいた。 これは飽くまで仕事。 「どこに、引っ越すの?」 「遠くないですよ?2つ隣町ぐらいです。」 「もしかして、港町?」 「あ、知ってます?」 知ってるもなにも、そこに住んでる。 これは運命? やっぱりこのまま終わりにしちゃいけない出会い? このまま本当に付き合っちゃう?って、今度は私が言うの? 「私も、近くに住んでるの。きぐう、ね。」 「ほんとですね。」 ニコッと微笑む彼女に、もどかしさが全身を走った。
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