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「いい香りがします」
鍋をかき混ぜる花の後ろから、久慈が覗き込む。
擽ったそうに笑った花の髪を撫でてやり、冷蔵庫を開けると、花が叫んだ。
「先生! 今日、シャンパンを買ってみたの」
「え?」
「銘柄とか知らないから、おいしいかどうか分からないけれど」
久慈は、花といるとき酒を飲まない。
車で送っていけなくなるからだ。
「お誕生日なんだから、乾杯しようよ」
久慈は、パタンと冷蔵庫を閉めて、花の背後に戻ってきた。
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