1034人が本棚に入れています
本棚に追加
「我もまた紅なり、ですね」
花が首を傾げた。
「神様が野原に降りてきて、紅い花を集めていた際に、吾亦紅が言ったんですよ。私も紅い花です、私も入れてください、とね。だから、吾亦紅」
「へえ」
「これが語源だというのは、作り話なんでしょうが、私はこの話が一番好きなんです」
久慈が色々と教えてくれるのは、いつものことだったが、自分の好みを言うのは珍しかった。
「この間、フィールドワークに出かけた先でも、吾亦紅を見つけましてね」
「うん」
ぶらぶらと繋いだ手を揺らしながら、二人は歩く。
長い廊下と階段を経て、二人は部屋に戻ってきた。
「花さんみたいだな、と思ったんですよ。真っ直ぐな、あなたのようだと」
「私?」
花が驚いて、振り返る。
最初のコメントを投稿しよう!