ダイヤモンド・リリーは涼風の瞬き

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真っ直ぐというのなら、久慈こそ真っ直ぐだ。 久慈と出会った頃に抱いたその印象は、今でも変わりない。 学問に真摯に情熱を傾け、人間に対しては時に臆病なほど慎重に向き合っている。 その丸く見開いた瞳を見て、久慈は微笑んだ。 「いや、違いますね。……結局、何を見てもあなたを思い出すんですよ、私は」 花は、振り返った姿勢のまま、瞬きをした。 (先生が、私を?) じわじわと歓喜が身体を伝う。 胸がいっぱいで、言葉が出てこなかった。
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