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花は、それでも構わない。
薄っすらと耳を赤くして、視線を逸らす久慈も好きだ。
眼鏡をかけていなかったときに、手持ち無沙汰にブリッジを探して宙を舞う、長い指もかわいいと思う。
ガチャリと玄関の錠が開く。
花は跳ねるように、玄関に向かった。
「お帰りなさい! 先生、お誕生日おめでとう!」
事前に鍵を預かり、今日来ていることは告げてあったのに、久慈は目を丸くしている。
「ああ……ありがとう。……ただいま」
しどろもどろに言って、眼鏡を押し上げ、靴を脱ぐ。
その間、鞄を持ってあげると、パチパチと瞬きを繰り返した。
久慈が着替えてくる間に、料理を温めた。
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