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他の学生たちは心配そうに二人を見たが、瑞樹さんが美しい顔でにこりと笑うと、魔法にかかったように帰る準備を始める。
「どこかにあるといいんだけど」
「ごめんな、バイトあるから」
学生たちは口々に言いながら、門のほうへ歩いて行く。
「ほらほら、お嬢ちゃんたちも帰んなさい」
瑞樹さんは、A.P.Cのコートのポケットに手を入れて言う。
「私も探します」
あまりの寒さに上下の歯がガチガチと鳴る。言ったそばから、華子にぐいっと引っ張られた。
「私たちは帰るよ」
「いやだ、残る」
頑として動かない私にぴしゃりと言う。
「もうすぐ芽衣ちゃんも探しに来てくれる。あんたは邪魔だよ」
恵麻も、私のコートの裾を引っ張る。
「未来、ここまで探して無いんだから、高校生の私たちにはもう何もできないよ。一緒に帰ろう?」
ユーキくんが、無理矢理笑顔を作る。月明かりに照らされたその顔は泣きそうにも見える。
「大丈夫ですから。未来さんは帰ってください」
恵麻と華子に引っ張られて、笑顔で手を振る瑞樹さんに見送られながら絵画棟をあとにした。
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