第三章:異邦人の家

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斜め向かいの席からアンリがまたテーブル中央に置かれた鍋に手を伸ばして、スープのお代わりをよそっていた。 具ばかりでなく、スープもたっぷり皿に入れる様子を見ると、「男を射止めたいなら、胃袋を掴め」という言葉を何となく思い出す。 祖母本人は苦手でも、作る料理の味は好きだから、彼もちょくちょく訪れているのかもしれない。 「たくさん作ったから、もっとお食べなさい」 祖母は横顔のまま、またぽつりと言った。 少なくとも、この角度からは、纏め上げた髪から色味を残した髪が一筋も認められない。
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