第四章:写真は語る

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食器を台所に片付けて、居間に戻ると、何とはなしに足が若草色のカーテンの引かれた窓際に向かう。 食べている間にも気付いていたのだが、そこには二台の写真立てに挟まれる形でケースに入れた銀のメダルが飾られていた。 左の写真立てには、表彰台に乗った三人のレオタードの少女が映り、右の写真立てにはズームアップする形でその内の一人が収まっている。 「体操やってたんだ」 固い面持ちで銀のメダルを白いレオタードの胸に提げたゾヤは、十二、三歳だろうか。 頬に丸みのある幼い顔つきもそうだが、ほっそりした脚は大人並に伸びていながら上半身はまだ凹凸の乏しい体形が、私が中学に入ったくらいの頃と良く似ている。 ただ、体操どころか学校体育のマット運動すら、真ん中より下だった自分と比べると、従姉妹とはいえ、随分と落差がある。 こうした素質はやはり遺伝や血筋ではなく、突然変異として現れるのだろうか。
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