第1章

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シドニー赴任のとき、最初に感じた感覚は「快適さ」であったが、ロンドンに着いてすぐ感じたことは「慌ただしさ」だった。それはトーキョーにいたときと似た感覚、ストレスの多い都会の生活を予感させるものであった。  ところでロンドン生活で私が面白いと思ったものにアンダーグラウンド(地下鉄)がある。アメリカでは地下鉄をSubwayと呼ぶが、イギリスではUndergroundと呼ぶ。 イギリスでSubwayというと、地下道を意味してしまう。ちなみにSubは下を表す接頭語で、例えばSub-marineと言えばMarine(海)の下、つまり潜水艦を意味する。 さて、この地下鉄、チケットを買って自動改札を通り、迷路のような通路をくねくね曲がりながら、ようやくホームへ出るのである。通路は狭い穴蔵のようなトンネルの中に縦横無尽に張り巡らされていて、まるで蟻の巣の中を通っているような感覚に囚われる。少し圧迫感もある。ロンドンに初めて来た人はまず戸惑うものと思われる。ホームは狭く、電車の内部もトーキョーのそれに比べると狭く、汚い。その形状から、チューブと呼ばれている。     
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