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私の目を真っ直ぐに見て、頭を下げてくれた麻美の気持ちはストンと私に落ちた。
「彩七、ごめんね」
そう伝えてくれた言葉を聞いて、私は何度も何度も首を振って麻美を見つめ、私も同じ言葉を彼女に向けて頭を下げた。
そしてその気持ちを有難いと思った。
自分の否を認める難しさ。舞子達と距離を取ることは、麻美自身が一人になるという事。だからこそ、彼女の信念が見えた気がした。
不思議だった。自分に誠実でいること事。そうした事が他人の意識をも変えてしまう。
あの時、苦虫を潰してでも舞子と仲直りをしていたら、今、舞子と千香と笑えていたかもしれないけれど、それは心からの笑いではなかったはず。
なにより麻美こそ本当の意味で離れて行った気がする。
でもそうして向き合った麻美とは、社内では今まで通りの距離を保っている。
舞子達と対極の立場を見せつけるように、麻美との仲を見せつけるような態度を取ることは、それこそ違うって思ったし。
麻美もまたそれが最善の道だとは思ってないと言った。麻美のような友達が社内に居るって思えるだけで、私は十分心強いと思える。
季節に流れる風を、同じ目線で感じられる友がいるということは……心を温かくしてくれる。そう感じることが出来る今を、私は幸せだと思う。
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