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それからゆっくりと近づいてきて、柔らかい鼻先をルシアの手のひらに押しつけた。
「そいつが懐くとはな」
振り返るとルシアが愛してやまない琥珀色の瞳が見つめていた。
「ミッチェ―どうしてここに? 仕事はどうしたの?」
彼は首をかしげてルシアを観察していた。
「これがおれの仕事だ」
彼は王という職務のかたわら馬の世話もしてるの?
「そう…あの、怒ってる?」
「おれが? いや。女がいるからといって気を悪くする男がいるか? 大歓迎だ」
彼は近づいてきてルシアを抱き寄せると、身を屈めて首筋に顔を埋めにおいを嗅いだ。
「いいにおいだな。おれとは違う」
彼は太陽と馬、それから清潔な汗のにおいがした。
「あなたのにおい、嫌いじゃないわ」
顔を上げた彼は、笑い方を忘れたかのように唇を引きつらせた。
「それはよかった。あっちに清潔な藁がある」
彼が手を引っ張るものだから、ルシアは簡単に広い胸に倒れこんだ。
「おっと、どうした。待ちきれないのか?」
彼に抱き上げられて、積みあげられた藁の上に降ろされた。
「こんなもの外しちまえよ」
彼は上に覆いかぶさると青いスカーフに手を伸ばした。金茶色の髪がこぼれ落ち、彼ははっと身を引いた。
「あんたが…おれが抱いたと知ったらどう思うだろうな」
「何のこと―ふっ」
強く唇を押しつけられ言葉が押し込められた。彼の手が服の上から胸を揉みしだき、頂が硬くなるのがわかった。
でも、何か…。何かが―。
硬い強張りを脚に押しつけられ、急いた手に脚の間をまさぐられる。
「ミッチェルっ」
ぱっと彼が離れた。息を荒げて見下ろす彼のズボンは生地が破れそうなほど膨らんでいた。
「最初はそれでもいいと思った。だがあいつの名を呼ばれるのはごめんだ」
「どういうこと―?」
彼は隣に片膝を立てて座り、腕をその上に置いた。
「おれの名前はベネディクトだ。あんたが勘違いしたのも仕方がないと思う。おれと王は一卵性双生児、くしくも血を分けた兄弟だ」
なるほど、たしかにそっくりだった。でも知っていれば二人はそれほど似ていない。ミッチェルの瞳は深く澄んでいてユーモアに煌めいている。だがベネディクトのは暗く何かを隠しているように掴みどころがない。ミッチェルは感情を隠さず素直に表情に表すが、ベネディクトの顔は固く強張っている。ほかにも挙げればきりがない。
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