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「あんたは何でここにいるんだ? 王が自分のものを自由に歩き回らせるとは思えない」
「私、抜け出してきたの。だって私は物じゃない。自分の好きなようにするわ」
またベネディクトが口を引きつらせた。きっとこれが彼の笑みなのだろう。
「とんだ跳ねっ返りだな。だがどうやって抜け出したんだ? 門は開けてもらえないだろう」
勝ち誇った笑みを向けて作戦を語り始めた。
「じゃああんたの代わりに友達がベッドにいるのか」
「そう。見張りは彼女を私だと思ってる。自分はちゃんと役目を果たしているとね」
「ほお。で、そこまでして厩に来たわけは?」
「実は馬の乗り方を覚えようと思って」
「見ているだけで乗れるようになると思ったのか?」
「まさか。ちゃんと練習するつもりだったわ。でもちょうどよかった。あなたは乗れるんでしょ、ベネディクト」
彼はじっと私を見つめた。何を考えているのか、表情がないからまったくわからない。
「スターはおまえを気に入ったようだな」
「スターってさっきの馬?」
「ああ。いいだろう、明日もおれのところに来られれば教えてやる」
彼は尻についた藁を払いながら立ち上がった。
「仕事がある」
さすがは双子、その台詞は前にもきいたことがある。
右脚を軽く引きずりながら馬の世話を始めた。
「その脚、どうしたの? 私のせいで痛めちゃった?」
彼は馬にブラシをあてながら強張った口調で言った。
「そうだと言ったら、『私はそんなに重くない』とかいうつもりだろう―これは古傷だ。銃弾にやられた」
出会ったばかりなのに慰めてやりたくなったが、それは見た目がミッチェルに似ているせいだけではない。その口調に表情には表れない強い悲しみがこもっていたからだ。
「痛かった?」
そばに行きたかったが、彼は誰も寄せ付けたくないだろう。
「いや。おれは軍人だったから怪我はしょっちゅうしていた。王に…仕事を奪われた方がずっと痛かった」
ミッチェルが彼の仕事を奪った? どういうことだろう。彼の涙ながらの言葉と何か関係があるのだろうか。
「おれには仕事しかなかったから。それを奪われるのは、自分の体の一部をもがれるのと同じことだった」
「そう…つらかったわね。今までにそれを誰かに言ったことある?」
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