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ルシアは彼の胸に手を触れた。ただ置かれているだけなのに体を興奮が駆け抜けた。
「あのねミッチェル―欲しいものがあるの」
その口調に幸福感は消し飛んだ。頬を張られたような衝撃に息が詰まり、ベッドに起き直るとルシアを見下ろした。彼女の赤く輝く髪はシーツに広がり、興奮の余韻で頬はピンクに染まっている。
清らかな女などではなかった。欲しいものを手に入れるために処女を手放すとは。
「くそっ、結局おまえもほかの女と同じだな。何が欲しい、宝石か? 絹のドレスか?」
ルシアは残念そうに目を伏せ、上掛けを胸の上に引っ張りあげた。
「おまえの体ならもう知っているぞ。いまさら恥じても遅い」
ルシアは下唇を噛んで震えていた。
自分の態度でルシアが傷ついていることがわかっているだけに、馬鹿だと思いながらも心が痛んだ。
「何だ? そのためにわたしに抱かれたんだろう。望みのものを手に入れろ」
強く噛みすぎたために唇に血が滲んでいた。
「おい、血が出てる。噛むのを止めろ」
「うるさい、馬鹿野郎! 一番欲しいものはもう手に入れた。あなたが欲しかったからベッドを共にしたのよ、さっきも言ったじゃない。石ころなんかのために処女を捧げるもんか」
ルシアは怒ると口が悪くなり早口でまくしたてる。さっき震えていたのは、涙を堪えていたのではなく、怒りのためだったのだ。
「嘘だと思う? 私の嘘はわかりやすいんでしょ」
「ああ…いや、そのつまり、嘘じゃない。一番欲しいのはわたしだった」
切れた唇を親指でなぞりながら静かに尋ねた。
「宝石じゃないなら何が欲しい?」
ルシアは手を掴んで唇から離させた。
「奴隷」
「何だって?」
「奴隷が欲しい」
頭が混乱してベッドに倒れこんだ。
奴隷だって? そんなものをねだった女は今までいなかった。
腕で顔を覆って考えをまとめようとした。だが頭の中はぐちゃぐちゃで隣には裸のルシアがいる。
「確かにタイミングが悪かったけど―ねえ、聞いてる?」
「ああ。だがもう疲れた。その話は明日にしよう」
体を横に向けると腕の中にルシアを閉じ込めた。顎をルシアの頭の上に、片手を丸い尻の上に休めた。女としたあとでこれほどくつろいだ気分なのは初めてだった。
脚の間を何かに撫でられていた。眠りを妨げられて思わず脚を閉じると太腿がチクリとした。
「何―?」
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