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「私の国にハーレムはないわ。だけどほかの国では、そうする」
彼は不思議そうに考え込んでいたが、それをとりあえずは脇に追いやったようだ。
「ミエルバ」
彼が呼ぶと、ほっそりした長い髪の―もちろん黒い―十八才くらいに見える女がやってきた。
「ルシアだ。琥珀の間に連れて行って世話をしてやってくれ」
ミエルバは可愛らしくにっこりした。私も釣られて笑みを返した。
「はい、ご主人様」
「わたしはまだ仕事がある。ルシア、夜になったら会おう」
そう言い残すとミッチェルは踵を返し、私を女たちの中に残して去っていった。
ミエルバが手を引っ張っていた。
「ついてきて。部屋に案内するから」
女たちの好奇の視線に晒されていると落ち着かないので、大人しくついていくことにした。
「ねえ―」
「ミエルバって呼んで」
「ミエルバは未成年よね。お母さんやお父さんはあなたがここにいること知ってるの?」
ミエルバの歩調が乱れた。
「あなただって未成年でしょ」
「私? 私は二十才だけど」
ミエルバは疑わしそうに振り返った。
「どうみても十六才くらいにしか見えない」
私は童顔じゃない。アルコールの場で身分証を見せろと言われたこともないし。
ミエルバの顔を見つめた。
「あなたはいくつ?」
「十三」
まさか! 確かに胸のふくらみはゼロに等しいけど、その表情や立ち居振る舞いにはあどけなさがない。
「ここがあなたの部屋」
立ち止まったミエルバが開けた部屋は、その名のとおりどこもかしこも琥珀色だった。壁もベッドも鏡台も色の濃淡はあれ、ウイスキーのように輝いている。ここにいては嫌でもミッチェルの瞳を思い出す。彼はそれを承知でこの部屋を与えたのだろうか。
カーテンをあけ、窓を開くとオレンジの太陽に照らされた黄金色の砂丘がどこまでもうねっていた。
「これに着替えて」
振り返ると差し出されているのは、思ったとおり女たちの制服だった。最初は二十才にもなって高校の制服は恥ずかしいと思ったけど、今は断然こっちのほうがいい。
「もっと肌を覆うものはないの?」
ミエルバはこれのどこが不満なのかという顔をしたが、チェストに取って返した。
ベットは天蓋つきだ。一度はこんなメルヘンなベッドで眠りたいと思っていた。
―ベッド。
「ねえ、彼は今夜、私とベッドを共にするつもりだと思う?」
「不満なの?」
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