第1章

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 チェストの中から声がした。  「そういうことはむやみにすべきじゃないと思うの。お互い愛し合ってて、結婚した男女のみに許される行為だと思う」  「ふーん。お堅いのね―これでどう?」 ミエルバが広げたのはハーレムパンツだった。上は相変わらず肩紐のないビキニだったがよしとしよう。  「いいわ。ありがとう」  脱ぎ捨てた制服をミエルバは物珍しそうに持ち上げていた。  「着心地が悪そう」  「今は濡れて重くなってるからね。確かにブレザーはちょっと窮屈だけど―」  指を指してどれのことか伝えた。 「ブラウスは薄いし、リボンがついててかわいいでしょ。スカートも履いてみれば気に入るわよ」  ミネルバは興味深そうに見入っていた。その様子は年相応に見えた。 「乾いたら、着させてあげる」  「ほんとに?」  「ええ」 ミネルバは嬉しそうに約束と言った。  「これどう?」 私はミエルバの目の前で一周してみた。羽織った布がさらさらと音を立てる。  「似合ってるよ」  私たちの間には友情が芽生え始めていた。ベッドに腰掛けて女どおしの話をした。その中で彼女は薄い羽織物のことをヴェーノと呼んだ。ここでは日本と同じ言葉が話されているが、全てが全て同じというわけではなく、しばしば意味のわからない言葉があることに気づいた。  「あなたたちはここで何してるの? その…彼に呼ばれない間は」  「あたしたち好きなことしてるよ。ミッチェル様はすごくお優しい方だから」  彼がすごく優しいというのには異論があったが、彼女に言っても仕方がないので無視することにした。  「例えば?」  「おしゃべりしたり、泳いだり、お菓子を食べたり」  「それだけ? 本を読んだり、出かけたりしないの?」  「文字が読めるの?」 ミエルバが身を乗り出した。  「もちろん。それに書けるわ」  崇拝するような眼差しが面映い。 「教えてあげましょうか?」  ミネルバの表情が曇った。 「ダメ。ミッチェル様がお許しにならないわ」  「さっきは彼のことを優しいと言ったじゃない」 眉を上げてミエルバをからかったが、明かりの消えた表情のままだ。 「どうしていけないの?」 優しく尋ねた。  「女は学ぶ必要がないと考えていらっしゃるの」  ミッチェルはずいぶんと遅れた考えの持ち主のようだ。 「私が彼を説得してあげる、ね?」  「そんな。ミッチェル様は女に意見されるのは―」
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