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チェストの中から声がした。
「そういうことはむやみにすべきじゃないと思うの。お互い愛し合ってて、結婚した男女のみに許される行為だと思う」
「ふーん。お堅いのね―これでどう?」
ミエルバが広げたのはハーレムパンツだった。上は相変わらず肩紐のないビキニだったがよしとしよう。
「いいわ。ありがとう」
脱ぎ捨てた制服をミエルバは物珍しそうに持ち上げていた。
「着心地が悪そう」
「今は濡れて重くなってるからね。確かにブレザーはちょっと窮屈だけど―」
指を指してどれのことか伝えた。
「ブラウスは薄いし、リボンがついててかわいいでしょ。スカートも履いてみれば気に入るわよ」
ミネルバは興味深そうに見入っていた。その様子は年相応に見えた。
「乾いたら、着させてあげる」
「ほんとに?」
「ええ」
ミネルバは嬉しそうに約束と言った。
「これどう?」
私はミエルバの目の前で一周してみた。羽織った布がさらさらと音を立てる。
「似合ってるよ」
私たちの間には友情が芽生え始めていた。ベッドに腰掛けて女どおしの話をした。その中で彼女は薄い羽織物のことをヴェーノと呼んだ。ここでは日本と同じ言葉が話されているが、全てが全て同じというわけではなく、しばしば意味のわからない言葉があることに気づいた。
「あなたたちはここで何してるの? その…彼に呼ばれない間は」
「あたしたち好きなことしてるよ。ミッチェル様はすごくお優しい方だから」
彼がすごく優しいというのには異論があったが、彼女に言っても仕方がないので無視することにした。
「例えば?」
「おしゃべりしたり、泳いだり、お菓子を食べたり」
「それだけ? 本を読んだり、出かけたりしないの?」
「文字が読めるの?」
ミエルバが身を乗り出した。
「もちろん。それに書けるわ」
崇拝するような眼差しが面映い。
「教えてあげましょうか?」
ミネルバの表情が曇った。
「ダメ。ミッチェル様がお許しにならないわ」
「さっきは彼のことを優しいと言ったじゃない」
眉を上げてミエルバをからかったが、明かりの消えた表情のままだ。
「どうしていけないの?」
優しく尋ねた。
「女は学ぶ必要がないと考えていらっしゃるの」
ミッチェルはずいぶんと遅れた考えの持ち主のようだ。
「私が彼を説得してあげる、ね?」
「そんな。ミッチェル様は女に意見されるのは―」
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