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気がつくとスカートに手を入れられていた。
「ちょっ―何やってるのよ!」
慌てて裾を押さえたが、男は意にも返さず探索の手を伸ばしている。
馬車の中にいるもう一人の人物に目を向けた。
「ねえ、この人に何とか言ってよ。だいたい女の子が困ってるのに、ただ見てるなんてどういう神経してるの?」
彼は自分に言われても困るというように、ただ肩をすくめただけだ。
その間も男は捜索範囲を広げ、今にも下着の端に触れそうになっている。
「やめて、やめてったら! 痴漢! 変態!」
男は口元を歪めた。
「まったく騒々しい女だな。宮殿で女たちが飼っているオウムの方がまだましだ」
男はようやくスカートから手を引き、ドサッと座席にもたれかかると腕を組んで、さっき助けてくれなかった非情な男に語りかけた。
「なによりわたしのことを変態よばわりした。エルフレッド王国の王をだぞ。鞭打ってやろうか―どう思う、サミュエル?」
サミュエルはじろじろと私を見た。濡れて透けた下着を見られないようにさっと胸を手で覆ったが、彼は興味なさそうに、自分のことを王だと思っている痴漢魔の方を向いた。
私は何となく侮辱された気がして、そろそろと手を下ろし、サミュエルを睨んだ。
「この女は見たことのない衣を身に着けているし、聖なる泉でずぶ濡れになっていた」
サミュエルは痴漢魔に言った。
「君のことも知らないようだし―男との接し方もわかっていない」
黙って聞いていれば…。
「接し方くらい知ってます」
二対の目がこちらを向いた。その表情を見れば、話の途中で口を挟まれるのに慣れていないことがわかる。
痴漢魔が眉を上げ、おかしそうに口元を歪めた。
「ほお…。それならば何故ペチャクチャとくっちゃべってたんだ? その口にはほかにもっといい使い道があるだろうに」
頬に血が上った。異性とあからさまにこういう話をしたことはなかった。
ますます痴漢魔の口角が上がり、さながら黒い悪魔のように見える。
「生娘か…。こいつはいい。気が変わった、鞭打ちは止めだ―さしあたりは」
サミュエルは気乗りしない様子で尋ねた。
「それでどうするつもりなんだ?」
「わたしのハーレムに連れて行く。それからのことは―」
肩をすくめた。
「どうにかなるだろう」
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