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「ごめんな、できすぎるお兄ちゃんを持たせてしもて」
こんなことを何食わぬ顔でさらっと言ってのける二こ離れた兄の神経がわからない。
「いや、大丈夫やで。そんなこと一度たりとも思ったことないから」
精一杯強がってみるけど、かえって痛々しく思えたり。
さらに追い打ちをかけるように、助手席からの、あまりに甲高い笑い声がわたしの耳を欺く。
煌々と太陽の光が照り付ける車内のなか。
窓の外を流れる、街道の満開の桜に見とれたふりを装うものの、内心は腸が煮えくり返ってどうにかなっちゃいそうだ。
前に座る両親は相変わらずわたしの気持ちなんてお構いなしで、母なんてまだ小刻みに肩を揺らしている。
けれど、そんな彼らに逆らうことも一緒になって笑い飛ばすこともできないわたし。
ついこないだ21歳の誕生日を祝ってもらったばかりで。
だけど今日もまた外食。
しかも、わたしの誕生日なんて、地元にある行きつけの値段も手ごろなレストランだったくせに。
今日なんて、真昼間から家から少し離れた市内の高級ステーキ屋さんに向かおうとしている。
わたしの兄はこの春から市内の大手銀行で働き始めたばかり。
今日はその一週間の新人研修とやらを終えた彼のお疲れ様会というのをするそうだ。
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