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2月22日、俺は18歳の誕生日を迎えた。学校が終わり、ふらふらと帰路につく俺の後ろでニャンニャンニャン?と可愛らしい鳴き声が聞こえた。
振り向くと3匹の野良猫たちが俺を見つめていた。ウルウルとした瞳ですり寄ってくる。
《大丈夫かニャ?》
《元気だしてニャ》
《泣いてもいいんニャよ》
心なしか野良猫たちが俺を慰めてくれてるんじゃないかと勘違いしてしまう。
そんなわけないじゃないか…。
「ありがとな…」
俺は野良猫たちにそう告げると再び歩き出した。
現在夕方4時。わずかに日が沈みかけていて夕陽が目に染みる。
「あぁ…痛ってぇ」
違う。目が痛いんじゃない。
痛いのはこの胸だ…。
俺、青池 蒼 (あおいけあおい)の胸が痛む原因は…放課後すぐのことだ。
人生初の彼女、来栖 未黄(くるす みき)ちゃんに振られたのだ。
未黄ちゃんは別のクラスで、「今日の放課後会いたい」と言われていたからどんなお祝いをしてくれるのかとドキドキしながら会いに行った。
《蒼くん…はいっ!誕生日おめでとう》
そういうと未黄ちゃんは俺に小さな箱を手渡した。
《ありがと!》
俺が頬を緩ませていると未黄ちゃんは俺に抱きついてきた。
あぁ、俺からしようと思ってたのに!とか残念がっていたら、頬にキスをくれた。
《えっ 未黄ちゃん!?》
童貞で臆病な俺は付き合って半年の彼女にキスさえできていなかった。
お…俺からしたかった…!とまた残念に思った。
《ご…ごめんね急に。蒼くん、そういうのあまりしてくれないから…寂しくなっちゃったの》
《そうか…ごめん。俺は、一緒に居るだけで幸せだからさ。》
アハハと笑ってみたけれど、未黄ちゃんは笑っていなかった。
《そういうとこ…つまんない。》
《え!?》
《一緒に居て話して笑ってるだけ。キスもハグもしないし。なにせ、あたしが他の人に告られても笑ってるだけ。》
《え…?》
《蒼くんは、本当にあたしのこと好きなのかなぁ?って最近考えてたの。》
《好きだよ!俺は》
《あたしは…もう…いや。そういう友達みたいな関係!蒼くんとあたしはもう…終わりなの》
そう言い残すと、未黄ちゃんは立ち去ってしまった。
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