*2月22日に*

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綺麗なリング。別れのリング。 これ以上思い出すと辛い。 ものすごく嬉しいけれど、コレは家のタンスの一番奥の奥の奥に仕舞っておこう。 俺は、ふらふらとブランコから立ち上がり、帰路についた。 でもやはり視界は滲んだままだ。 もう少しでこぼれそう。 このまま家に帰るの恥ずかしいなぁ…。 そう思った俺は、少し寄り道をすることにした。 家から15分ほどの人気のない場所にある隠れ家的カフェ。 カフェの名前は《フリージア》。 デジャヴを感じたが、気にしない。 滲んだ瞳のまま店に入ると… 「いらっしゃいませ。お好きな席にどうぞ。」 コーヒーの芳醇な香りとともに現れたのは…何か見たことがある奴だった。 《気のせいだろ》 そう思い、平然と一番奥の席に座った。 「ご注文はいかがなさいますか?」 顔をあげると、またそいつがいた。 見たことがある…。 高校生にしては洒落こんでる栗色のマッシュっぽい髪型、180cm以上ありそうな身長。 ふわりとしたオーラの割には目つきが悪く、《あの人怖いよね》と未黄ちゃんが言ってた気がする。 「そんなに見つめて…お客様、いかがなさいましたか?」 「ふぁっ!?あ…アイスティー…ください。」 動揺してしまった。 「アイスティーですね。承知いたしました。少々お待ちください。」 それでもあいつは鋭い目つきのまま、ニコリと微笑んで去っていった。 《あんなに目つきが悪いのに、接客はすげぇ丁寧だな…》 《そういえば、今日は課題がいくつかあったよな》 《帰ったらすぐやらないと》 思い出さぬよう、くだらないことを次々と考えていた。 すると… 「お待たせいたしました。アイスティーでございます。」 またあいつだ。 「どうも」 普通に頭を下げて受け取ろうとしたら、 そいつはアイスティーを引っ込めた。 「えっ!?」 「《青池蒼》…だよね?」 「えっ…何で」 《何故俺の名を知っている???》 隠れ家的カフェらしいほのかな灯りがそいつの顔を照らし、ひどく妖艶に見えた。 「ふられてたっしょ?」 「は…っ」 《なんだこいつ!?なんで俺の惨劇を知っている!?》
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