22人が本棚に入れています
本棚に追加
全てお見通しなのか…。
「見てたの?」
「あぁ、丁度俺もバイト行くところで見かけたから…」
「てかお前…誰だよ?なんかみたことあるけど」
俺がそう聞くと、そいつは再びアイスティーを差し出し、俺に顔を近づけた。
そしてそっと呟いた。
「栗枝薫」
「……あーっ!!」
やっとわかった。くりえだかおる。隣のクラスの問題児。
「どうせ…“問題児のあいつだ”とでも思ったんだろ?」
間近で睨まれた。栗枝の目つきは刃物のように鋭利で、怖い。
「ば…ばれたか」
俺は嘘がつけないのだ。いやでも、髪を染めていてバイクで通学し、服装もだらしがなく、提出物は出さない。おまけに教師には常に反抗的。これじゃあ問題児と言われて当然だ。
チキンな奴だな…俺がそんなに怖いのか?」
「へっ!?」
ギロギロと睨まれ続けて元々潤んでいた目が更に潤んでゆく。
《怖いに決まってるじゃないか!!!》
そう思ったけど言えず。
「いや…これは未黄ちゃんにふられて」
「うぜぇ…女々しすぎ」
チッと舌打ちして吐き捨てた。
ため息をついて、栗枝は続けた。
「お前な…今日が何の日か知っているのか?」
「えっと…俺の誕生日?」
「違う…ニャンニャンニャンの日だ…!」
「えっ!?ニャンニャンニャン???」
俺は心底驚いた。
このツンケンとした栗枝が、“ニャンニャンニャン”とか言っちゃってるんだもん。
「2月22日。猫を大切にしろよ」
「ふっ…あはははは」
笑いがとまらない!
とまらない。
鋭い目つきで「猫を大切にしろよ」だってwww
「何がおかしい」
「いやー、栗枝くんって意外とかわいいところあるんだなーって思ったからさ。」
「何だと…!?」
《あれ…怒らせちゃったかな》
「お前…うぜぇ…」
見上げると、栗枝は言葉とは裏腹に頬を緩ませて目をそらした。
怒らせてはなかったみたいだ!
「栗枝くん…照れちゃってるの?」
「は!?」
俺がそう言うと栗枝の顔はどんどん赤くなる。
《意外と可愛いやつなんだな》
「お前な…それ飲んだらさっさと帰れ」
俺の頭をくしゃっ、と触って栗枝は立ち去った。
「このアイスティー、めっちゃうまい!!!」
いつの間にか俺は笑顔になっていた。
最初のコメントを投稿しよう!