*2月22日に*

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全てお見通しなのか…。 「見てたの?」 「あぁ、丁度俺もバイト行くところで見かけたから…」 「てかお前…誰だよ?なんかみたことあるけど」 俺がそう聞くと、そいつは再びアイスティーを差し出し、俺に顔を近づけた。 そしてそっと呟いた。 「栗枝薫」 「……あーっ!!」 やっとわかった。くりえだかおる。隣のクラスの問題児。 「どうせ…“問題児のあいつだ”とでも思ったんだろ?」 間近で睨まれた。栗枝の目つきは刃物のように鋭利で、怖い。 「ば…ばれたか」 俺は嘘がつけないのだ。いやでも、髪を染めていてバイクで通学し、服装もだらしがなく、提出物は出さない。おまけに教師には常に反抗的。これじゃあ問題児と言われて当然だ。 チキンな奴だな…俺がそんなに怖いのか?」 「へっ!?」 ギロギロと睨まれ続けて元々潤んでいた目が更に潤んでゆく。 《怖いに決まってるじゃないか!!!》 そう思ったけど言えず。 「いや…これは未黄ちゃんにふられて」 「うぜぇ…女々しすぎ」 チッと舌打ちして吐き捨てた。 ため息をついて、栗枝は続けた。 「お前な…今日が何の日か知っているのか?」 「えっと…俺の誕生日?」 「違う…ニャンニャンニャンの日だ…!」 「えっ!?ニャンニャンニャン???」 俺は心底驚いた。 このツンケンとした栗枝が、“ニャンニャンニャン”とか言っちゃってるんだもん。 「2月22日。猫を大切にしろよ」 「ふっ…あはははは」 笑いがとまらない! とまらない。 鋭い目つきで「猫を大切にしろよ」だってwww 「何がおかしい」 「いやー、栗枝くんって意外とかわいいところあるんだなーって思ったからさ。」 「何だと…!?」 《あれ…怒らせちゃったかな》 「お前…うぜぇ…」 見上げると、栗枝は言葉とは裏腹に頬を緩ませて目をそらした。 怒らせてはなかったみたいだ! 「栗枝くん…照れちゃってるの?」 「は!?」 俺がそう言うと栗枝の顔はどんどん赤くなる。 《意外と可愛いやつなんだな》 「お前な…それ飲んだらさっさと帰れ」 俺の頭をくしゃっ、と触って栗枝は立ち去った。 「このアイスティー、めっちゃうまい!!!」 いつの間にか俺は笑顔になっていた。
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