*ある雪の日の*

4/8
22人が本棚に入れています
本棚に追加
/62ページ
「!?」 ライダーは、素早くヘルメットを外した。 「おい!お人好し野郎」 聞き覚えのある声のそいつは栗色の髪をふわりと揺らし、俺を見た。 ギロり。 「うわっ…」 ただでさえ雪が体に染み込んできて冷えきっていたのに一層凍えた。 だってそいつは 栗枝薫だったからだ。 「おはよう…栗枝」 「おはようじゃねーよ早く乗れ」 栗枝は自分のバイクの後ろをバンバンと叩いた。 「マジですか」 俺は嫌…というか少し怖かったけど 遅刻してしまうから仕方なく栗枝に従った。 ブロロロロロ…とエンジンを蒸かして発進した。運転する栗枝の後ろに座り、不安定だから仕方なく栗枝の腰に手を回した。 「おい…」 栗枝は俺の行動に驚いたみたいだ。 「落ちそうだから、仕方ないだろ?」 「まぁ、そうだな。では、急ぐぞ」 「ぅわぁぁああ!?」 栗枝は急発進してものすごいスピードで走るから本当に振り落とされそうになる。 縮こまって栗枝にギュッとつかまっていると、彼のシャツからコーヒーの芳醇な香りがした。 《なーんか、落ち着く》 でも、すれ違う車や人に凝視される… 恥ずかしいなぁ 「栗枝!あと2分だよ!」 そう彼を急かすとまた舌打ちされた。 「うるせぇ…あと10秒で着く」 「あっ…ほんとだ」 俺が周りを見ていなかっただけで、無事に時間内に到着した。 「栗枝っ!ありがとう。」 そう言うと栗枝は既に階段を登って去ってしまう。 「おいっ待てよ」 俺も急いで階段を駆け上がった。 教室に入って着席した瞬間、チャイムが鳴った。 「青池、セーフだな。」 担任がそう言ってきた。 「あっ、はい。」 「さっきバイクのような音がしたのだが…?」 担任が怪訝そうな顔で近づいてくる。 やべーバレてる。 「あぁ、それは栗枝くんに送ってもらったんですよ?ちょうど道で会ったら乗せてってくれて。」 「あいつ…そんなことしたのか」 「彼は意外と優しい人ですよ。」 「そうか??あいつが?青池、あいつとはあまり関わらないほうがいいぞ」 担任は呆れたような顔をして、去っていった。 《どんだけ嫌われてるんだよ栗枝…》 今朝無愛想ながらも助けてくれた。普通なら無視していくところを。 栗枝だって優しいところがある。 栗枝の一部だけを見て全てを判断する先生に腹が立った。
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!