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「理事長、そろそろ失礼したいのですが……よろしいですか?」
「あぁ、すまない。良いぞ」
啓馬先輩は理事長さんにひと言いうと立ち上がり、僕の方に向き直った。
「それでは夜霧君、行きますよ」
「あ、はい! 理事長さん、新月君、さよなら!」
僕はまた啓馬先輩におぶさりながら、笑って2人に手を振った。その瞬間、2人とも口に手を当てて顔を逸らす。
……知ってるよ! どうせ僕がやってもキモいだけですよ~だ!!
「……行きますよ」
「っわ!?」
何でか知らないけど、啓馬先輩が不機嫌……あ、さっきまでずっと理事長さんと話してたからかな? 何か話したいことがあったのかも;
理事長室を出て寮に向かう途中、僕は恐る恐る先輩に声を掛けた。
「あの……啓馬先輩」
「どうしました? 足痛いですか?」
「その、ごめんなさい」
僕が啓馬先輩に謝ると、先輩は歩きながらもキョトンとした顔を見せた。
「何に対して謝っているんですか?」
「え? だって啓馬先輩、理事長に用事があったんじゃ?」
「用事? 貴方を連れていくだけでしたが?」
え? それじゃ、さっきまでの不機嫌は何処から来たの?
「…………」
「……もしかして、私が不機嫌に見えてましたか?」
「!!」
「やはりそうでしたか……夜霧君、貴方の所為ではありませんよ」
苦笑しながらの先輩の答えに、僕は揺られながら首を傾げた。なら、どうして不機嫌だったんだろ?
「貴方の所為ではありません。原因はあの2人ですよ」
「??」
あの2人って、理事長さんと新月君だよね? なんかしてたっけ?
先輩に聞こうと思ったけれど、なんかブツブツ呟いてて恐いし……ついでに、僕の部屋に着いたみたいだし?
「ここが夜霧君の部屋です」
3階の一番奥の部屋が僕の部屋らしい。なんか、この部屋だけ異様な雰囲気が……;
「私は生徒会室に戻りますが、大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です! ありがとうございました!」
「暫くは安静にしていてくださいね? 落ち着いてから、職員室に行ってください」
あぁ、担任かな? それにしても先輩は心配性だなぁ……
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