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そのときだった。
フラリと私の視界を遮った背中。
落ちてくると思い目をつむった。
手にしていた買い物袋も落としてしまう。
目を開けると、その背中はそこで止まっていた。
階段の脇にある銀色の手すりを掴んでいて、ツンと指で意地悪をしたら、転んでしまいそうなくらいバランスが悪い。
そのとき私の足の間を柔らかい感触がすり抜けた。
鳥肌が立つ。
同時に、鈴がチリンと鳴った。
振り返りると階段を下りて行く白い猫のお尻。
しっぽを左右に振っては何処知れずの優越感を感じさせる。
王冠みたいに特別に見える、赤い首輪。
「すみません」
それが彼の第一声で、私はまた階段の上にある背中を見た。
背中の人は顔を後ろへ振り向かす。
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