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「あっ私の!」
渉の右手に握られている桃花のパーティバッグを渉から奪い取ると、桃花は渉を少し睨んですぐに部屋から出ようとした。
早くここから・・・とにかく成宮の家から離れたい。
ドアは開かれたままの為廊下へ出るのにそう時間はかからない。
渉の前からはほんの2、3歩の距離だ。
「なあ・・・ちょっと聞きたいことあるんだけど?」
渉がそう言い終わると同時に桃花の右手はグイッと引っ張られ、閉められたドアの前に引き戻されると桃花の前に真剣な表情の渉が見下ろすように立っていた。
桃花は自分の前髪に渉が声を出す度に洩れる息が掛かって、近すぎる二人の距離に動揺する。
ななな・・・何すんのよっ?・・・ていうか近いってば!
桃花は少しでも離れようと上半身を後ろにのけぞり、顔を横にそらしてみたものの状況は変わらなかった。
に・・・逃げられないんだけど~!?
いつの間にか渉の顔がさっきよりもっと近くにある。
不意に渉の左手が桃花の右肩に乗せられた。
えっ・・・な、ナニ?なんなのよ~!?
「・・・コレ、いつからある?」
・・・は?
「コレってなんのこ・・・」
桃花は言いかけた言葉が一瞬で凍りつく。
そのワケは桃花が今着ているノースリーブのワンピースの肩の布地を渉が自然にめくっていたからだ。
「ちょっとおっ!なに勝手に触ってんのよッ?」
怒号と共に繰り出された桃花の正拳突きは、勢いよく渉の顔面めがけていった・・・
バシッ
「・・・なっ・・?」
こんなに近距離で打ったアタシの本気の突きを止めるって・・・
桃花の右拳は渉の左の掌で顔を防ぐような形で受け止められていたのだ。
それも左手で止められるなんてっ・・・くう~ッ!ムカつくッ!
桃花が悔しそうに渉を睨み付けると渉は口の端を少し上げてフッと微笑った。
その余裕な表情がますます桃花の怒りを増殖させる。
「勝手に女子の肌に触っておいて」
怒りが収まらない桃花は、今度は左の拳で容赦なく渉の顔めがけて襲いかかった。
バシイッ
「あ・・・」
なんで?
何で成宮には私の拳が通用しないの?
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