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「大丈夫って言われても、オレは付き添いたいんだ」
「気持ちだけ頂いておく。ヨシは自分の事だけに専念して」
「そう言われてもなー。瑠衣が生まれてくるまでは落ち着かないな。自分の子じゃないけど、すげー愛着あるし」
ヨシは愛情を注ぐような瞳を私のお腹に向けて、再び、優しくさすった。
「リューマはこの子を見るより役者の道を選んだのか……。
あんなにミユキの妊娠を望んでたのにな。ハリウッドってそんなにいい所なのか。
オレには理解出来ないけど」
「…………」
ヨシの言葉がチクリと胸を刺す。
リューマは普通の家庭に収まってはイケナイ人だったんだ。
あの容姿だし。
役者としても才能あったし。
リューマの選んだ道に、私は反対はしない。
「私もシャワー浴びてくる」
つい暗くなってしまった私にヨシは表情をハッとさせて
取り繕うように言った。
「リューマもいつかは思い直す事もあるかもしれないよ。
けど、後から現れてもミユキは渡さないけど」
「リューマが後から現れるなんて事はないよ……」
私を思い出してこの子の存在も知ったのに、連絡もしてくれないって事は
やっぱり、半年間でリューマの気持ちが変わってしまったという事。
その現実はしっかり受け止めて、目を反らさないで、前向きに生きていくしかない。
前向きにって思うのに、
苦い思いが胸じゅうに広がって
無意識に唇を噛んでいる私がいた。
リューマの事は忘れるんだ!
「ヨシ……今夜添い寝して?」
「はっ?」
脈略なくそう言った私にヨシは間抜けな顔をして私を見上げた。
「ヨシの温もりで私を包んでほしい。」
リューマの温もりを忘れられるように……
「…………」
「臨月のミユキを襲う気はないし、ミユキもそんなつもりはないのかもしれないけど、オレがムラムラして眠れないかも」
「だっ……たらいい。言った事、撤回する!」
私もなんでそんな事を言ってしまったのか、慌てふためいた。
けれど、ヨシは優しい目をして微笑んだ。
「いいよ。ミユキが安心して熟睡できるように添い寝してやる」
「うん……。今夜……だけ…ね」
なんて甘えん坊みたいな事を言ってるんだろうと顔がカァっと赤くなるのを感じて、それがバレないように
そそくさと着替えを持ってシャワーを浴びに浴室に入った。
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