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私を抱き締めたまま動かないユンさんに私はどうして良いか分からない。
ライラさんが可愛い顔をしながらユンさんに怒っている。
それでも離れようとしないユンさん。
「離れろ」
凛とした低めの声に私はピクリと反応した。
無理矢理にユンさんを引き離すカイさん。
なんだか少しいつもより表情が険しい。
「ちぇ。せっかく、聖女ちゃんに癒されてたのになぁ」
ユンさんが下唇を突き出しながらブツブツと文句を言っていた。
「ここは特訓所だ。規律を乱すな」
カイさんは険しい表情でユンさんに言い、そして私へと視線を移す。
「聖女は守られてれば良い。ここへは来るな。はっきり言うが迷惑だ」
いつもより冷たい声と軽蔑するような瞳に私は胸が苦しくなった。
どうして、そういうことを言うの?
「酷いよっ、カイ!今の言い方は失礼だよ」
ライラさんが珍しく怒った表情で言うが、カイさんは険しい表情で私を見据えていた。
「女はめんどくさい。泣くな」
俯く私を見据えながら言い捨てるカイさん。
それを聞き、私はカイさんを軽く睨み付けた。
「泣いてません!」
目に涙を溜めながら私はそう言い切った。
それを見たカイさんがほんの少したじろぐ。
「それではっ、失礼します!」
やけ癖になりながらも私は言い、この場から立ち去るようにした。
本当に!
もうカイさんなんか嫌いなんだから!!
失礼しちゃう!
プンプンと怒りながら通路を歩いていると、護衛を連れて歩く王様ノアリスと出くわした。
「我が国の聖女様はお怒りかな?」
笑いながらそう言うノアリス様が私へと近づいてくる。
ポンポンと優しく大きな手で私の頭を撫でるノアリス様。
「どうか機嫌を直してくれないか」
私は頭を撫でられながら俯く。
顔が熱くなっていくのが分かる。
安心する大きな手。
「ノアリス様、私は聖女じゃないんです。特殊な力なんて何も...」
「そっか。それを気にしているのか。それなら気にしなくても良いんだよ。瑠菜、そなたがいればこの国は幸せになれる」
そう言って優しく微笑むノアリス様。
この方は本当に凄い。
この方の言葉は安心する。
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