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安心するノアリス様の大きな手に、私は静かに涙を流していた。
聖女として、私はどうすれば良いかずっと考えてきていた。
特殊な力がなくてもーー
「そなたがそんなに一人で頑張らなくて良いんだよ」
ノアリス様の言葉が私の心に染み入る。
温かく、優しい声。
私は涙を溢しながらノアリス様を見上げる。
「ありが..とうございますっ」
「ズルいな。その表情..」
私がお礼を告げると、右手で口元を隠しながら目線を少し外しながら言うノアリス様。
「はい?」
私は涙を拭いながら聞き返すと、ノアリス様は静かに首を振った。
何でもない、と言うかのように。
「私、ノアリス様と出逢えて良かったです!」
そう告げ、笑うとノアリス様の表情が驚きに満ちていく。
そして、優しく私を包む彼の腕。
「可愛いことを言ってくれる」
少し困った口調のノアリス様だが、私を包み込む腕は優しい。
ドキリと鼓動が高鳴り、私は緊張してしまう。
「あ..あのっ」
私がそう声を掛けるとノアリス様はゆっくりと私から離れた。
優しげに細められる彼の瞳に私はドキドキが止まらない。
「何かあったら私に相談して良いからね」
そう優しげに彼は言い、この場から離れていく。
私はそんな彼の後ろ姿を見つめていた。
私は自分の部屋へ戻ろうとした瞬間、躓きそうになり、
「きゃっ」
小さな悲鳴を上げた。
「どうした!?何かあったのか?」
私を守るように背中で庇う彼の背中。
半身体を開き、手は剣の柄を掴んでいる。
素早く私を守るようにしているカイさん。
転けそうになったなどと口が避けても言えない。
カイさんはこういうところは生真面目なんだから。
先程、私に酷いことを言った張本人なのに。
「な、何でもありません。大丈夫だから」
私がそう言うとカイさんは私へと振り向き、
「そうか。ならば、良かった」
いつもの表情で淡々とした口調で言う。
「その...悪かったな」
「え?」
「迷惑だとか守られてれば良いとか...酷いことを言ったから」
目線を外しながら言うカイさんの頬は心なしか赤いが気がした。
「ふっ」
思わず笑みが溢れてしまう。
あのカイさんが謝っている。
頬をほんの少し染めながら、言葉を必死に探している。
それが何故かいとおしいと感じてしまった。
「何が可笑しい。わ、笑うな」
少し焦りながら言うカイさんは逆効果だ。
カイさんが可愛いーー
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