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少しはカイさんと親しくなれたのかな?
そう思うと嬉しい。
ーーそれから、騎士たちは他国との戦に出陣する。
他国と対立している最中らしい。
青い鳥がシンボルのユーラザン王国だ。
私はいつもはお城でお留守番だが、今日は一緒に出陣することにした。
あの恐怖が鮮明に頭の中に残っているが、私も聖女としてやるべきことがある。
例え、特殊な力がなくても。
カイさんと共に白い馬に乗り、私は戦場へと向かう。
第一部隊の隊長であるカイさんは戦場になると顔つきが更に険しくなる。
「本当に、本当に大丈夫か?私はそなたが心配で仕方がないよ」
うるうると瞳に涙を溜めながら私に言うこの国の王様ノアリス様。
馬に乗りながら歩調を合わせ、ノアリス様は私を見ている。
かなりの過保護になっている。
「陛下、聖女様は私が必ずお守り致します」
「頼んだよ、カイー。瑠菜ぁ、カイから離れたら駄目だよ。もし、怖かったりしたらお城に戻って良いんだからね..あと」
「はいはい。陛下、前を向いてください」
「カイイイ、本当に瑠菜のことを守るんだよ」
かなり過保護になるノアリス様を軽く受け流すカイさん。
それでも負けじと伝えようとするノアリス様に私は少しだけ笑った。
「大丈夫ですよ、ノアリス様。私、皆さんのお役に立ちたいんです」
私がそう伝えるとノアリス様が渋々と承諾したように私たちから馬を離していく。
「もうノアリス様ったら過保護なんだから」
「陛下は君がとても大切だからな」
「カイさんは...私が聖女だから守るんですか?」
「....ああ」
私の問いかけにカイさんは少しだけ間をあけたが、それに答える。
知っている。
私が聖女だからカイさんは私を守っていることを。
聖女ではなかったら私は貴方の瞳には映らない。
馬鹿だな、私。
何を期待していたのだろう。
チクリと心に突き刺さる刺。
涙が溢れそうになるのを堪えながら私は前を向く。
ここはもう戦場だ。
気を引き締めていこう!
「第二部隊隊長ライラ、出撃します!」
そう声を張り上げたのはライラさん。
何百人もの騎士を連れて、前方にいる敵国へと出撃していく。
いつもの可愛らしい顔つきではない。
鋭い、騎士の目だーー
死と隣り合わせの戦場。
自分から赴いたのは、少しでも役に立ちたいからだ。
私は男性の格好をし、剣を身に付けている。
聖女だとバレないための変装だ。
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