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ーー*瑠菜side*ーー
(この国の神殿に来て)
小さな女の子の声。
その声が頭の中に響き、私は瞼を開く。
少し見慣れた天井が目に入り、窓から差し込む光も視界に入ってきた。
いまは朝なのだろうか。
上体を起こそうとすると、頭がズキズキとした。
昨日はーー
ルイツ様の言葉に、やけくそになってーー酒を一気に飲み干した。
そしてーーそこからあまり記憶にない。
とても失礼なことを言ったような気がする。
あのまま小屋で眠ってしまったのだろう。
だが、ここは小屋の中ではなかった。
いつの間にか城の客室のベッドの上に寝かされていた。
この国に来てから使っている客室だ。
客室には私一人しかいない。
ルイツ様の姿はなかった。
彼は私の無礼に怒っているだろうか。
扉からノックの音がし、返事をすると静かに扉が開いた。
一礼し、部屋に入ってきたのは侍女だった。
「お目覚めになられたのですね」
トレーを持ちながらこちらへと歩み寄る侍女。
トレーの上には水の入ったグラスが置かれていた。
それを私へと差し出し、私はゆっくりと受け取る。
グラスに口をつけ、ゴクゴクと飲んだ。
冷たい水がとても美味しく感じられた。
「とても可愛い髪留めですね」
そう言って微笑む侍女に私は小首を傾げる。
私の頭を見ているようだが。
不思議に思いながら髪に触れると何かに触れた。
それを不思議に思いながら取ると、見覚えのある髪飾りが目に入った。
蝶々の髪留めだ。
ルイツ様が私にくれた髪留めだが、私はそれを拒んだ。
それなのにーー
いらないって言ったのに。
どうして、私にーー
髪留めに視線を落としていると、侍女が静かに口を開く。
「陛下からご伝言を承りました。本日、謁見室及び応接室付近には近付かないように、とのことです」
侍女の言葉に私は顔を上げた。
何か大切な話し合いもしくはお偉いさんがここに来るのだろうか。
ここから出られる手がかりはまだ見つからない。
でも、今日は大人しくしておいた方が良いだろう。
ーー神殿に来てーー
ふと思い出した言葉。
この国に神殿はあるのだろうか?
「あの……神殿に行ってみたいんですが」
私は恐る恐る言うと、侍女は少し驚いた表情をした。
「神殿ですか?大丈夫ですが……」
侍女は少し驚きつつも告げ、物珍しそうにこちらを見ている。
何か変なことを言っただろうか?
それから、侍女が用意してくれた朝食を食べ、神殿に行く準備を始めた。
髪留めは取り敢えずポケットの中へ入れておいた。
神殿に行く道を教えてもらい、城から近い場所にあるそうで、ここから遠くはないようだ。
一人では危険だと護衛に一人騎士が着いてきてくれるそうだ。
準備を終えた私は護衛の騎士と共に神殿へと向かうことにしたーー
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