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本当に城からそこまで遠くない場所だった。
けれど、人気のない場所。
街からも外れている場所。
小さな森の奥にひっそりと佇む建物。
ここが本当にあの神殿なのかと思うような場所だ。
手入れなど一切されていないようなところだからだ。
木材で建てられた神殿は今にも壊れてしまいそうであった。
「あの……ここで待っていてもらえますか?」
一人になりたかった私は護衛してくれている騎士に一声かける。
騎士は私へ一礼し、神殿の入り口の前で歩みを止めた。
古びた扉に手を掛け、ゆっくりと開くと、軋む音が響く。
ゆっくりとした仕草で神殿の中へ入り歩くたび、ミシミシと軋む音がした。
所々、天井に穴が開いていて、雨が降ったら大変そうだ。
周りは質素で飾りなど何もない。
微かに土や古びた木、草のような臭いがした。
それもそのはずだ。
床から雑草が生えていたり、小さな花が咲いていた。
全く手入れされていない無人の神殿。
小さな神殿は森に囲まれているからか中は薄暗い。
少し入った先に祭壇があった。
そして、その近くには誰かが立っている。
静かに祭壇を見据える後ろ姿に私は声を掛けようか迷った。
その時だった。
木々の軋む音に静かにこちらへと振り返る人物。
その瞬間、異様な気を感じた気がした。
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