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ーーチクチク……チクチク
時計の音がやけに響き渡る。
どれぐらい時間が経ったのだろう。
窓に目をやると、外はすっかり夜になっていた。
妙な夜空だーー星が一つもない。
漆黒に覆われた空は奇妙で、ぶるりと思わず身震いした。
やけに静かな部屋、廊下、外。
こんなに静かなことがあっただろうか。
何かが可笑しい。
(…る……な……)
不意に頭の中に聞こえてくる声は途切れ途切れになっていた。
女の子の声ーー祈り子様だ。
そこから、何も聞こえなくなった。
今のが合図だったのだろうか。
私は恐る恐る扉に手を掛け、静かに開けるようにした。
廊下には誰もいない。
静まり返っている廊下に妙な違和感を感じる。
人の気配がない。
そんなはずはない。
誰かしらいつも廊下を歩いていたのだから。
兵士や侍女、執事ーー城内にいるひとたちの姿がない。
ひんやりとした廊下を私はゆっくりと歩く。
どうしてーー誰もいないの?
誰もいない廊下を暫く歩いていると、人影があり、その先に消えていく。
人影の後を追うと扉がほんの少し開いている部屋があった。
誰かいるのだろうか。
薄暗い部屋の扉をゆっくりと開き、私はすぐさま鼻につく異様な匂いに眩暈がしたが、周囲を確認するようにした。
使われていない客室のようだ。
円形のテーブル、椅子、姿見、ベッドがあった。
「……この匂いっ……なに?」
クラクラするようなキツイ匂い。
頭がボーっとしてしまうような感覚になる。
「……誰かっ……いませんか?」
むせかえるような匂いに声が出ない。
フラフラとなりながら動かす足は限界だった。
立っていられなくなる。
身体中がとてつもなく熱い。
ここから早く出ないとーーー
「……はぁ……はぁ」
喉が異常に渇く。
そこで、誰かがこちらに来る足音がした。
視界が歪んで見える。
誰なのかーー分からない。
何も考えられない。
ただ、身体中が熱くーー喉が異常に渇いてしまう。
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