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ーー*ルイツside*ーー
あいつが帰ってから俺は執務室で公務に没頭していた。
暫く執務室で公務を行っていると、いつの間にか夜になっていた。
窓を見ると、星一つない漆黒の空が広がっていた。
変だなと思いつつ、俺は椅子から立ち上がる。
『残念です』
そう言って悲しげに微笑むあいつの顔が頭の中に浮かび上がった。
人に触れられるのを極度に嫌うあの王子の顔を。
昔から知ってる奴だが、あいつの考えていることは分からないーー俺よりも冷酷な奴。
それにしても、やけに静かな夜だ。
いつもは執事がキリの良いところで入って来るのだがーー今日は誰も執務室に来ていない。
可笑しいと思いつつ、俺は執務室の扉を開く。
扉の外には護衛しているはずの騎士の姿がなかった。
ーー何が起きている?
護衛を外れるよう命令はしていないはずだ。
俺は妙な違和感を覚えながら、静まり返っている廊下を歩く。
「誰かいねぇのか?」
そう声を上げるが、誰からも返答は帰ってこない。
暫く廊下を歩いていると、人影を見つけ、
「おいっ」
声を掛けるとスッと消えていく人影。
俺は不思議に思いながら後を追うようにした。
後を追った先には扉がほんの少し開いている部屋があった。
ここは誰も使っていない客室だ。
俺は不思議に思いながらほんの少し開いている扉を開き、部屋の中へと入っていく。
「……っな」
むせかえるような匂い。
手で口元を押さえながら少し部屋の中を歩くようにした。
すると、ベッドの上で苦し気に横たわっている人物を見つけ、俺は目を見張った。
「……大丈夫かっ?」
見知った人物だった。
艶やかな腰まである漆黒の髪に美しい顔立ちをした女。
俺の声に大きな目元をした青みがかった黒の瞳がこちらを見る。
とろんとした青みがかった黒の瞳に俺は思わずドキッとした。
ベッドの上で苦し気に横たわっているのはーー瑠菜だった。
とろんとした青みがかった黒の瞳に赤く染まった頬。
苦し気に吐息を漏らす女に俺は高鳴る心臓を抑えることが出来なかった。
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