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連れてこられた場所は大きなお城だった。
ここに来る前から感じていたが、ここは日本ではない。
かと言って私の知っている海外でもないわけで。
街の人たちの衣服は身軽だが、きっちりとした衣服に見える。
それは、女性も一緒であった。
長めのスカートばかりだ。
私みたいな短いスカートはいない。
だから珍しい格好なのか。
煉瓦で造られた大きなお城に着き、白い馬から降りる少年。
無言で私へと手を差し伸べる青年の手。
さらりとした丁度良い長さの金髪に、涼しげな目元の透き通った蒼い瞳、無表情の端正な顔立ちは改めて見惚れてしまう。
「何をしている、早く掴まれ」
凛とした低めの声に私は我に返った。
緊張している私はゆっくりと手を伸ばし、彼の手を掴んだ。
言葉とは裏腹に優しく私を白い馬から降ろしてくる金髪の青年。
「ありが..とうございます」
私は緊張しながらもお礼を言うと、何も言わずに金髪の少年は歩き始める。
スタスタと行ってしまう金髪の青年に、私は呆気に取られてしまう。
置き去りにされる私はこの先、どうすれば?!
すると、険しい表情で振り返った金髪の青年が口を開く。
「...遅い」
「は、はい...」
怒られてしまった。
何も言わずに行くから分からない。
言葉が足りないのだ。
少し怒りを覚えながら私は金髪の青年の後ろを歩いた。
青年の後ろ姿も綺麗だ。
それにしても、かなり広いお城だ。
赤い龍の刺繍で作られた大きな布が目立つ。
赤い絨毯の上を歩きながら着いた場所はまるでテレビとかで見る玉座。
そこに座っている二十歳ぐらいの青年。
黒い艶やかな髪を一本に結び、目鼻立ちがハッキリとした顔立ちに、吸い込まれそうな程の赤い瞳。
その青年に片膝をつき、頭を垂れる金髪の青年。
「我が国を救うであろう伝説の聖女を連れてきました」
そう凛とした低めの声に私は驚く。
何を言っているのだとーー
「うんうん。よく頑張ったね、カイ」
そう嬉しそうに褒める青年と私は目が合った。
ドキリと胸が高鳴る。
「本当に美しいね~」
ニコリと微笑む青年に私は目線を外した。
「異世界から来た伝説の聖女かぁ」
「..私はっ、聖女じゃ...ありません」
青年の声に私は声を上げ、再び彼と目が合う。
それでもにこやかに笑う青年。
私は本当に異世界へ飛ばされてしまったのか。
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