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この別世界には言い伝えがあるらしい。
異世界から来た少女は一つの願いを叶えることができる、特殊な力がある。
それは聖女と等しい。
それが、私だと言うのか。
幸運をもたらしてくれるとか勝利を導くとか、私には何の力もないのだから無理である。
そして、この国はクルニナ王国らしく、先程の青年はこの国の王様らしい。
赤い龍がこの国のシンボル。
他国と戦乱が続いているらしい。
青い鳥をシンボルとした国は、先程私を襲った騎士の国だ。
色々と説明されたあと、私の部屋を用意してくれたようで、私はそこで休んでいる。
白の壁紙に、大きな綺麗なベッド、天蓋がついている。
一人にしては広い部屋だ。
休んでいるとガチャリと扉が開き、私は緊張しながら見守った。
ひょこっと顔を出したのは、中性な顔立ちをした少年。
栗色のふんわりとした髪に、ふっくらとした可愛らしい頬に、丸い目元の若葉色の瞳。
「本当にいる!僕、ライラって言います。えっとね、伝説の聖女さんにどーしても会いたくて、来ちゃいました!」
えへへ、と可愛らしく笑う少年はまるで小動物のように可愛い。
まさに、天使だと思う。
「あの...私は、神崎瑠菜と言います」
「名前まで不思議なんだね!凄い!!えっと、瑠菜さんよろしくお願いします」
私が名前を言うと、嬉しそうに笑いながらお辞儀をするライラさん。
ここへ来て私は少しだけ心が安らいだ気がした。
毎日が不安だった。
帰りたいと何度も思った。
けれど、帰る方法が全く分からない。
ライラさんのお陰でどうにかここで暮らしていける。
そんな日々が一ヶ月は過ぎたーー
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