第1章

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どうして、そんなに必死に私を探していたの? 私が聖女だから? いつも冷たい態度のカイさんが分からない。 「君はこの国の聖女なんだから、勝手にいなくなっては困る」 はあ、と深いため息をつくカイさん。 やっぱり、聖女として見てるから私をそんなになってまで探していたのか。 「城へ戻る」 そう彼は一言呟き、そこから私たちは話すことなく、お城へと着いた。 カイさんは私といてもつまらないのだろう。 お城へ着くと、カイさんはすぐに私から離れ、剣の特訓へと行ってしまう。 「ねぇねぇ!一緒に剣の特訓する?」 そう明るく声を掛けてくれたのは、ライラさんだった。 人懐っこい笑顔は私の心に染み入る。 第二部隊のライラさんも剣の腕は凄いらしい。 私は頷き、剣の特訓を受けることにした。 特訓所はたくさんの騎士がいた。 剣の特訓をしている者が多く、剣術を教えているカイさんの姿があった。 カイさんと目が合ったが、すぐに逸らされてしまう。 「おい、聖女様がいるぜ」 「美しいよなぁ」 騎士たちが私を見て何か話している。 ライラさんが木刀を持ち、剣の振り方を教えてくれる。 手本を見せたあと、ライラさんが近くに来て木刀を握る私の手と重ねるようにして握る。 「うん。何か持ち方が様になってるね」 そう間近で話すライラさんに私は緊張してしまう。 顔が熱い気がする。 手が、ライラさんの手が! そう内心慌てていると視線を感じ、私はふと見た。 すると私を見据えるカイさんが目に入る。 じーっと見据えてくるカイさんの視線が痛い。 見ないでください! そう思いながら素早く視線を逸らした。 「あのっ..私、剣道を習っていたから」 そう慌てながらライラさんと距離を取った。 「剣道?」 不思議そうに首を傾げるライラさん。 言葉は通じていないだろうが、私はコクコクと頷く。 「聖女ちゃんがここにいるって!」 そう嬉しそうに声を張り上げながらこちらへ来るのは、ユンさんだ。 ツンツンとした紅い髪に、キリッとした顔立ち、少しつり上がった目元に栗色の瞳。 第三部隊の隊長でもある。 第一印象はノリが軽い。 「聖女ちゃんいつも可愛いよねー」 ヘラヘラと笑うユンさんに最初は戸惑っていたが、今は慣れてしまっている自分がいる。 「きゃっ」 不意に抱き締められ、私は小さな悲鳴を上げた。 ユンさんが私を抱き締めているのだ。 心臓の音が聞こえてしまう!
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